LGA2011はデスクトップのハイエンド規格です。LGA1366の後継にあたります。当初はLGA1365になる予定でしたが、大型化されたLGA2011となりました。 LGA1155のCore i-2000シリーズと同じ世代のハイエンド版のSandy Bridge-Eと LGA1155のCore i-3000シリーズと同じ世代のハイエンド版のIvy Bridge-Eがあります。
Sandy Bridge-EやIvy Bridge-EとX79 Expressチップセット マザーボードの組み合わせは、負荷の高い処理を複数同時に実行する場合や、大量のメモリデータを扱う場合、複数のグラフィックボードの搭載や多くのストレージデバイスの搭載に最適です。
CPU内蔵のGPUが不要でCPUコア数や拡張性を重視する場合はLGA2011+X79チップセット決まりです。それ以外ではLGA1150+Z87/H87チップセットをおすすめします。
LGA2011のX79チップセットでは、設計の世代が異なるIVY Bridge-E または Sandy Bridge-EのCPUを搭載することができます。
どちらもGPUは非搭載であり、CPU性能に大きな違いはありませんが、内蔵されるPCI-EがIVY Bridge-EではPCI-E3.0の40レーンになり、搭載可能なメモリもDDR3-1866MHzの4chとなり59.7GB/sにメモリの転送速度が向上しました。
IVY BridgeのCore i7-4770Kではメモリ転送速度は25.6GB/sなので、最大転送速度は2倍以上の差があります。しかし、この差が現れるのは大きなデータを扱う場合に限られます。LGA1150のIVY BridgeよりもCPUが大型であり、電気通信の距離も長くなり、レイテンシが長くなってしまいます。
これは小さな車で荷物を運ぶのか、大型トラックで荷物を運ぶのと同じです。小さく少ない荷物を何度も運ぶ場合は大型トラックでは効率が悪くなってしまいます。しかし、小さな車では運べない荷物の場合は大型トラックで運ぶ方が仕事が早く終わります。
LGA2011 ハイエンド・デスクトップ・プロセッサーは小回りは効きませんが、大きなデータの扱いで効率が高くなるCPUです。
LGA2011 ハイエンド・デスクトップ・プロセッサーはグラフィック機能は内蔵していないため、グラフィックボードの接続が必要です。
IVY Bridge-EではPCI-E3.0を、Sandy Bridge-EではPCI-E2.0を搭載しています。PCI-E3.0はPCI-E2.0の2倍の帯域があります。これはつまり、PCI-E3.0のx8とPCI-E2.0のx16が同じことを意味します。
グラフィックボードを2枚接続する場合、LGA1150のIVY BridgeではPCI-E3.0が16レーンの搭載であるため、PCI-E3.0 X8+x8 と、1枚分の帯域を半分に分けることで動作します。LGA2011のIVY Bridge-Eでは40レーン搭載されているため、PCI-E3.0 x16+x16で動作します。グラフィックボードのデータ転送が制限されずに性能をフルに発揮することができます。
グラフィックボードを3枚接続する場合、LGA1150のIVY Bridgeではx8+x4+x4となります。LGA2011のIVY Bridge-Eではx16+x16+x8となります。これで丁度40レーンになります。4枚の場合はx16+x8+x8+x8で40レーンとなります。
つまり、LGA2011のシステムならば、グラフィックボードを複数搭載する場合に性能を制限されずに同時に動作できるのです。
小回りが効かずに大きなデータに強いのがLGA2011の特徴ですが、6コア12スレッドのCPUと2枚以上のグラフィックボードを生かすことで、1台のPCで複数の処理を同時に実行する場合も生かすことができます。
動画変換では、1つの大きなデータを分割して並列に処理を行います。大きなデータと複数の処理を行うため、CPUとメモリの性能が一番生きることになります。
複数のゲームを多重起動する場合も多コアと多グラフィックボードを生かすことができます。あるゲームでは露店放置しながら、別のゲームをメインでプレイするという場合に、、LGA1150のシステムよりも動作に余裕があり、重くなりにくいのです。
CPUコアに余裕がある場合は、HTテクノロジを無効にして純粋に6コアとして動作させるという使い方もあります。HTテクノロジを有効にして1つのコアで2つの処理を行うと1コアあたりの効率が悪くなってしまいます。1コア2スレッドは独立した2コア分の処理能力があるわけではなく、1.5倍程度に相当します。HTテクノロジを有効に活用できる場合は2コア分の処理能力に近くなり、あまり活用できない場合は1コア分に近い処理能力となります。
2スレッドに分けずに1スレッドで処理が収まる場合、分けることのできない処理の場合は、HTテクノロジを無効にして1コア1スレッドの方が処理が早いのです。少しでもゲームを快適に動作させたい場合は、4コアを丸々ゲームに割り当てて、余った2コアでゲーム以外の処理を任せると他の処理の影響でゲームがもたつくという問題を解決することができます。 4コアに制限されないゲームなどはHTテクノロジが有効のままの方が全体の処理能力はたかくなります。
また、HTテクノロジを無効にするとターボブーストやオーバークロックの余力が高まります。スレッド数は6コアで十分でコアの処理能力(動作周波数)を高めたい場合はHTテクノロジを無効に設定することで動作を最適化することができます。
CPUソケット | DMI | メモリー | コードネーム | |
---|---|---|---|---|
Core i7-4000 | LGA2011 | DMI2.0 5GT/s | DDR3-1866MHz 4ch 59.7GB/s | Ivy Bridge E |
Core i7-3000 | LGA2011 | DMI2.0 5GT/s | DDR3-1600MHz 4ch 51.2GB/s | Sandy Bridge E |
Core i7-4770K | LGA1150 | DMI2.0 5GT/s | DDR3-1600MHz 2ch 25.6GB/s | Haswell |
DMIはCPUとチップセット間の接続です。 LGA1366と異なり、LGA1155と同じDMI 2.0のみの接続となります。 グラフィックの内蔵がないためFDI接続はありません。
コア 数 |
スレッド 数 |
スマート・キャッシュ | CPU 基本 クロック |
TB 最大 クロック |
TDP | |
---|---|---|---|---|---|---|
Core i7-4960X | 6 | 12 | 15 MB | 3.6 GHz | 4.0 GHz | 130W |
Core i7-4930K | 6 | 12 | 12 MB | 3.4 GHz | 3.9 GHz | 130W |
Core i7-4820K | 4 | 8 | 10 MB | 3.7 GHz | 3.9 GHz | 130W |
Core i7-3970X | 6 | 12 | 15 MB | 3.5 GHz | 4.0 GHz | 150W |
Core i7-3970X | 6 | 12 | 15 MB | 3.5 GHz | 4.0 GHz | 150W |
Core i7-3960X | 6 | 12 | 15 MB | 3.3 GHz | 3.9 GHz | 130W |
Core i7-3930K | 6 | 12 | 12 MB | 3.2 GHz | 3.8 GHz | 130W |
Core i7-3820 | 4 | 8 | 10 MB | 3.6 GHz | 3.9 GHz | 130W |
Core i7-4770K | 4 | 8 | 8 MB | 3.5 GHz | 3.9 GHz | 84W |
語尾のXは最上位のCPUを表しています。一番高性能なCPUが欲しい場合に、古いXモデルの流通が残ってしまいますのでX付だけでの判断はご注意ください。Kシリーズ同様に倍率がロックフリーとなっています。
語尾のKはCPU内部の倍率ロックフリー版。CPUの品質に応じて倍率設定を変更することで、CPU単独でのオーバークロックが可能です。CPUの倍率変更に対応したマザーボードが必要です。
オーバークロックによる動作可能な性能はCPUの個体差や環境により異なります。オーバークロックによる故障は、保証期間内に故障しても保証対象外となります。
Sandy Bridge-Eの6コアモデルは8コア搭載されている内の2コアが無効化されています。このような場合、消費電力で不利になりやすいのですが、Sandy Bridge-Eのアイドル消費電力はとても低く抑えられており気にする必要はなさそうです。IVY-Bridge-Eでは6コアCPUとして設計されています。
負荷時の消費電力はコア数の増大やPCI-Eレーン数の増大と高速なメモリアクセスのためにLGA1150のHaswellやLGA1155のSandy Bridgeよりもとても高くなっていますが、前世代のGulftown(LGA 1366のCore i7-900シリーズ)よりも少なくなっています。
Core i7-4820Kは一応Core i7-4770Kの上位に位置します。ただし、これはオーバークロックや、大きなデータや複数のグラフィックボードを使う場合に限られます。
1つのアプリやゲームに処理が集中している場合、レイテンシが長く小回りが効かないことが災いして、Core i7-4770Kに処理能力が劣ってしまいます。
Core i7-4930Kの場合も、6コアを生かさない場合は4820Kと同じです。
Core i7-4930Kの基本クロックがCore i7-4820Kよりも低いのは、コア数の違いによるものです。Core i7-4930Kも4コア8スレッドで動作する場合は熱量に余裕があるためTB(ターボブースト機能)で動作クロックが高くなります。保証外(オーバークロック)になりますが、設定されている定格値が異なるだけで、Core i7-4930KもCore i7-4960Xと同じクロック性能で動作できます。
LGA2011では4枚へのメモリーに同時にアクセスするクアッドチャネルとなり、その分メモリーの相性がシビアになっています。LGA1155でも4枚のメモリーが搭載できますが同時アクセスは2カ所のみで残り2枚は性能への貢献はなく容量を増やすためのものですので、同じ4枚搭載する場合はLGA2011の方がデータ転送が速くなります。
LGA2011ではメモリーを8枚搭載可能なマザーボードがありますが、4枚でも8枚でも性能は変わりません。規格上は4枚までの対応であり、8枚搭載する場合は相性にとてもシビアになりますのでご注意ください。DualBank(両面実装)のメモリーでの8枚搭載に対応しているマザーボードは少なく、8枚搭載する場合はSingleBank(片面実装)のメモリーにしか対応できないマザーボードがあります。32GB以上の容量を確保したい場合は高価ですが1枚で8GBの大容量メモリーの4枚挿しをおすすめします。
また、大容量メモリーを搭載して、システムディスクにSSDを使用している場合は無駄な書き込みが大きくなってしまうためWindowsのハイブリットスリープ(休止状態)を無効にすることをおすすめします。
4chの並列アクセスは大きなデータの転送で性能を発揮します。小さなデータでの大量のアクセスではLatencyが小さくできる2chでのLGA1155に性能が劣る場合があります。
X79チップセットは LGA1155のP67チップセットとそれほど変わりません。X79では本来はSATA3.0 が6ポート対応なのですが、不具合が生じるため2ポートに制限されています。Z68で対応しているSSDをHDDのキャッシュとして利用するIntel Smart Response Technology(ISRT)にはX79は対応していません。
SATA3.0が6ポート使える新リビジョンが将来登場する可能性があります。物理的な問題であるため現行品をアップデートで対応することは不可。ECSのマザーボードには無効化を解除したようなモデルがありますが、不具合を起こす可能性があります。外部チップでSATAを増設している場合は問題ありませんが、チップセット内蔵よりも性能が低くなることがあります。高速なSSDを3台以上搭載する予定がなければ気にする必要はありません。
上記はチップセットの仕様であり、マザーボードに実装されるポート数等はマザーボードごとの仕様に準じます。
X79のマザーボードには標準ATXよりも形状が大きなモデル(Extended ATX や XL-ATX)も多く発売されるためPCケースが対応しているか注意が必要です。
LGA2011のCPUでは現在、CPUクーラーが別売りとなっています。
LGA2011ではCPUの大きさが大きくなり、厚みも高くなり、CPU周りのメモリソケットの位置等、LGA1366やLGA1155等とは大きく異なっています。
そのため、既存品のLGA2011の固定方法に対応させただけではなく、LGA2011に合わせて新設計されたモデルを使うことをおすすめします。
水冷の場合、CPUは冷えてもCPU周辺のコンデンサーやメモリーが冷却できずに高熱になり故障しやすくなる場合があります。PCケース内部の空調にご注意ください。
ツクモでは購入時に交換保証を申し込みと、不良品以外の場合でも別の製品との差額交換が可能になります。取り付けが干渉しないか、想定している使い方で問題が無いか等、不安がある場合は是非活用してください。