Cooler Master (クーラーマスター) のNepton 120XLは、ラジエーターを12cmファンを2つで挟んだ構造の水冷式のCPUクーラーです。
簡易水冷式でポンプとラジエーターがパイプで繋がった一体型となっておりメンテナンス不要で、PCケース内部に簡単に取り付けることができます。
・メーカーサイト
CoolerMaster: 水冷Neptonシリーズ(日本語)|Nepton 120XL (英語)
Neptonシリーズの12cmファンは冷却能力を損なわず騒音値を抑えるSlencio FP 12cmファンを採用。
Neptonシリーズの14cmファンは冷却性を重視したJetFlo 14cmファンを採用しています。
Nepton 120XLでは2つの12cmファンでラジエーターを挟み込むことで、PCケースへの取り付けは12cmファン1カ所での接続となります。同じく14cmファンのNepton 140XLがあります。
Nepton 240Mでは12cmファンを2列に並べてラジエーターが広がったことで水冷の冷却能力を高めています。12cmファンの取り付け位置が2つ並ぶPCケースへの接続となります。 同じく14cmファンの接続が2列となるNepton 280Lがあります。
PCケースのファンの取り付け位置に合わせてお選びください。
対応しているCPUソケットは、
Intel LGA 2011-3 / 2011 / 1366 / 1150 / 1156 / 1155 / 775
AMD Socket FM2 / FM2+ / FM1 / AM3+ / AM3 / AM2+
120mmの25mm厚のファンが2基。ラジエーターを挟み込んでPCケースに固定します。
簡易水冷式はファンを付けたラジエーターをPCケースの排気ファンの代わりに取り付けるのが一般的です。
このファンは1基をPCケースの外側に出して固定することもできます。
CPUとの接触面には銅が使われており、内部は効率よくを熱が移動する構造に設計されています。
表面がザラザラしていますが付属のグリスで十分に熱が伝わっているので問題はありません。
ポンプの音は15dBA以下であるため気になりません。
銅板の大きさ:62.4 x 56.4 (LxW mm)
フィンの面積:32,000 mm2
ポンプとラジエーターの接続にはFEP素材のチューブが使われています。丈夫で曲げに強く、捻っても水流が低下しにくい作りとなっています。また液体の自然蒸発が少なく長期にわたり劣化しにくいのが特徴です。
12cmファンとラジエーターをねじで固定しますが間に付属の防振ゴムを挟みます。これにより、ファンの振動音が接触により広がるのを防ぎます。防振ゴムは2つ付属しており、PCケースとの接触面にも使いたい場合は市販品が使えます。
ラジエーターの左右側はファンよりも出っ張らないので12cmファンが取り付けできるPCケースの多くは問題なく取り付けることができます。上下方向は広がっていますがこの部分が干渉してしまうことはあまりありません。
付属のファンは静音から大風量まで賄えるSilencio 120FPが使われています。
回転数:800-2400rpm
騒音:6.5-27dBA
回転数は最小740rpmを確認しました。オーバークロックの高冷却だけではなく、静音用のCPUクーラーとしても使えそうです。
50%(1200rpm)以下では静音、60%(1500rpm)から音が気になるようになり、80%(2000rpm)からは音が響くようになります。
ラジエーターの大きさは、150 x 119 x 38 mm 。
ファンの大きさは、120 x 120 x 25 mm 。
厚みが問題になる場合は、ファンを1基PCケースの外側に固定することもできます。
PCケースの内側に固定するとこのようになります。
Nepton 120XLのケース側のファンの固定方法はいくつかありますが、この場合はPCケース側のファンを先に固定せずにPCケースと一緒に挟み込んで固定しています。 このファンをケースの外側に出して固定することもできます。
ファンの固定に使うネジは付属の小さなネジを繋げることができます。
先にファンをラジエーターに固定して、PCケースとネジを小さなネジで固定することもできます。
このPCケースRV03ではファンが剥き出しになるので、ファンとPCケースは一緒に固定した上でファンガードを小さなネジで取り付けました。長いネジはPCケースの板を挟むだけの余裕があるので、内側にもケーブルの巻き込み防止のためにファンガードを取り付ける場合は、長いネジで一緒に挟むことで使うことができます。
付属のバックプレートはIntelとAMD両対応の設計になっています。Intel製CPUの場合はIntelの文字が外向きになるようにネジをはめ込みます。
ネジを止める黒いカバーは、マークの付いている側から差し込むのが取り付けのポイントです。真っ直ぐ差し込もうとすると簡単には入りません。取り付けるCPUソケットの種類によって爪をスライドさせて止める位置(マザーボードの穴の位置に対応)が異なります。マザーボードに直に接するのはこの黒いカバーの部分になります。
ポンプ部の取り付けはこのようになります。
まずはポンプ側のバネ付ネジのプレートを固定します。バックプレートの上にマザーボードを挟み、六角のネジで止めます。この六角のネジの片側にはショート防止とマザーボードに傷を付けないためのものが付いているので、黒い方をマザーボード側に固定します。マザーボードに挟む前にネジの位置を合わせます。ネジは上に引っ張った状態でスライドさせることで穴の位置を合わせることができます。
同じ構造で複数のソケットに対応させるために、取り付けには穴の位置合わせが重要になっています。バックプレートのネジの位置とマザーボードの穴の位置とバネの付いたネジの位置をしっかり合わせます。
重さは、何も取り付けていない状態で723.5g、ファン2つとポンプのネジを付けた状態で1119.0g。
バックプレートでしっかりネジ止めできるのと、ラジエーターとファンはPCケースに直接固定するので重さによるマザーボードへの負担を気にする必要はありません。
動作時は上品なホワイトLEDが点灯します。
ポンプとファンの電源ケーブルは、ポンプをマザーボードのCPU_FAN(ファン接続端子の表記はマザーボードにより異なります)コネクタに接続して、ケースファンは付属の2股ケーブルで1本にしてマザーボードのCPU-OPT_FANかCASE_FANコネクタに接続します。
マザーボードでファンの回転数を自動制御する場合、CPU_FANとCPU-OPT_FANは連動しますが、ポンプはPWM制御のpinが外されているためポンプの回転数には影響せず、ファンのみが回転数制御されます。
PCケース Silver Stone RV03に、Scytheのグランド鎌クロスとCoolerMaster Nepton 120XLとの比較。
Scythe グランド鎌クロス。トップフロー式の空冷で大型ヒートシンクに14cmファンが搭載。HDDや光学ドライブのケーブルの差し替えで手を切ることがあります。
CoolerMaster Nepton 120XL。ケースファンとラジエーターが一体となる簡易水冷でCPU周りはスッキリしました。最上部の光学ドライブのケーブルの差し替えができなくなりましたが、ここは故障しない限り手を入れないところなので特に問題なし。12cmのファンを下に伸ばした形状で、はみ出しは無いのでケースのサイドカバーは普通に取り付けできます。
※このPCケース Silverstone RV03はPC背面が上側になっています。一般的なPCケースでは光学ドライブやHDDは写真では下側に配置される(横向きになる)ので取り回しが楽になります。
Core i7-3770Kをオーバクークロックの4400MHzで動作してるときのCPU温度を比較します。
Core i7-3770Kの定格では4コア動作時は3700MHzです。4400MHz動作設定の電圧は「CPU Voltage:Offset +0.100V」としています。
CPUクーラーとPCケース上部のファン(写真で黄色いファン)の動作は100%固定。Nepton 120XLではPCケース上部のファンを取り外して、CPUクーラーのファンになります。
マザーボードのアシストファンは自動制御(無効にしても温度により作動する)、PCケース下部とHDD前の吸気ファンは45%程度(650rpm程度)に固定。
Nepton 120XL | グランド鎌クロス | ||||
---|---|---|---|---|---|
動画変換 | Prime95 | FAN50% | 動画変換 | Prime95 | |
気温 | 24.2 ℃ | 24.9 ℃ | 23.9 ℃ | 25.5 ℃ | 25.2 ℃ |
Core #0 温度 | 32.0 - 71.0 ℃ | 31.0 - 78.0 ℃ | 29.0 - 80.0 ℃ | 32.0 - 74.0 ℃ | 31.0 - 85.0 ℃ |
Package 温度 | 32.0 - 73.0 ℃ | 31.0 - 85.0 ℃ | 31.0 - 89.0 ℃ | 32.0 - 78.0 ℃ | 32.0 - 93.0 ℃ |
Package Power | 11.44 - 68.62 W | 11.42 - 85.53 W | 11.41 - 85.91 W | 11.41 - 69.10 W | 11.40 - 86.9 W |
測定はHardwareMonitor PROでCPU情報を取得しています。
動画変換はTMPGEnc5で5分間の動画をCPUによるX.264エンコード。(CUDAは無効)
Prime95は「Small FFTs」を5分間動作。
同じ条件で測定していますが、動作状態によるブレも確認するために、Package Power(CPUの電力)も合わせて掲載します。
動画変換は一般的なCPUの負荷が高い処理を行ったときの温度変化になります。
グラフ 左がCoolerMaster Nepton 120XL。右がScythe グランド鎌クロス。
マザーボードの温度センサーからの取得で、ASUS AI SuiteIIのSensor Recorderによるグラフです。ASUS SABERTOOTH Z77ではマザーボードに多くの温度センサーが作動しています。
黄色がCPU温度、青と水色がCPU付近のVCORE温度で緑がCPUから離れたマザーボード温度となっています。
Hardware Monitor PRO による各CoreとPackage温度のグラフ。
Nepton 120XLは最大73℃。グランド鎌クロスは最大78℃。
Hardware Monitor PRO によるPackage Power(CPUの電力)のグラフ。
Nepton 120XLは最大68.62W。 グランド鎌クロスは最大69.10W。
動画変換は処理が毎回同じにはならないため、負荷の変動による電力と発熱の変動があります。
グランド鎌クロスの途中の段差は終了処理に伴う現象で、CPUクーラーの冷却性能の比較では無視して構いません。
Prime95では通常の処理よりも極端にCPUを酷使するときの温度変化になります。
グラフは左がCoolerMaster Nepton 120XL。右がScythe グランド鎌クロス。
Nepton 120XLは最大85℃。グランド鎌クロスは最大93℃。
Nepton 120XLは最大85.53W。 グランド鎌クロスは最大86.9W。
負荷が高く電力が高いとその分の温度も高くなってしまいます。Prime95では同じ条件で測定しているので電力の変動はできれば全く同じになるのが好ましいのですが、PCの特性上、誤差が出てしまうのは仕方ないですね。
Prime95ではCPU負荷が常に100%付近であるためグラフの線が安定しています。また、コアによるバラツキもハッキリと表れています。
CPUの内部情報による温度は正しく調整されたものでないため、数値は極端に間違っている場合もあるので、数値そのものよりもアイドル時と負荷時の温度変化の確認に用います。この温度は同じCPUであれば変わらないので、CPUクーラーの違いによる変化はそのまま数値を用いた比較をしても問題ありません。
2基のファンを50%に制限すると最大85℃のところが89℃にアップ。それでもグランド鎌クロスの93℃よりも低い。オーバークロックで100%付近の負荷であるためこの温度ですが、通常の負荷であればファンの回転は静音で使えますね。
ラジエーターがシンプルな120mmモデルは大型ヒートシンク搭載の空冷式に劣る場合もあるのですが、CoolerMasterのNepton 120XLは優秀な冷却性能となっています。ファンの回転を音が気にならない50%に制限しても大幅な温度の上昇にはならずに冷却効率が良いようです。